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自衛隊海外派遣は慎重であれ-5

自衛隊派遣に短絡するな

飯塚ご謙遜でしょう。とにかく、今申したようなことを、先生に聴いて頂いて肩の荷がすこしおりた感があります。

ところで、木場主幹の企図は「日本の未来を考える」ということです。このあたりでそちらに移りたいと思います。

本誌日本の世界に対する貢献はいかにあるべきかが熱心に論じられるようになったのは、国力の充実に伴うもので慶賀すべきことだと思います。特に湾岸以来、金を出すだけでなく人的な貢献が強調されるようになり、PKO(国連平和維持活動)協力法案が、今臨時国会でも焦点になっています。

先生は人的貢献は必要だが、今の性急なやり方は問題だと警告し、お説は新聞などにも大きく紹介されています。だが、その警告にそむく形で現実が進行しています。

後藤田冷戦は終わったが、その後はまだ大変化の過程で、新しい秩序がどう落ち着くか分からない。今はそういう段階です。

米ソの両極体制からアメリカの一極体制に変わりつつあるのは確かだが、アメリカ自身独力で秩序を維持するだけの圧倒的な力はなくなりつつある。

そういう中で日本がこれだけの大国になり、国力にふさわしい貢献をという声が国際的に高まっている。これは当然すぎることです。それに応えるのもまた当然のこと。問題はその貢献のあり方、手段、方法で、選択を誤ってはいけないというのが僕の主張の根底にあります。

飯塚主計将校として戦争に参加し、敗戦後は横浜で占領軍との折衝に苦労され、また自衛隊の前身の警察予備隊創設、警察庁長官、政界に入られてからは官房長官として数々の危機管理を指揮された。そのご経験が先生のお説の背景にあるのでしょう。

後藤田日本は世界の平和を推進するという方向で貢献することが第1点。第2点はその力を世界の発展に役立たせるような貢献をする。この2つが基本だと思う。

世界の多くの国が豊かになったが、南の国には飢え死にに瀕している何億の人々がいるのですからね。世界全体の発展向上のためにこそ日本は貢献すべきではないか。国際貢献即自衛隊の武力による軍事貢献と短絡して考えるのはいかがなものか。過去の歴史の教訓にも照らして慎重にやらなければならない。

飯塚仰言る通りです。敗戦は幼時のことで、戦争の怖さを経験しない世代が自民党の要職につく時代ですからね。先生は陸軍に6年だそうですが、私も3年いましたので、先生のお説に共感してきました。

後藤田日本に軍事貢献を望んでいる国はありますか。アメリカだって本心は望んでいない。アジア各国は勿論です。武装部隊を使うことには特に慎重な判断をする必要があります。これが僕の基本的な考え方です。平和の推進のためにやることは幾らでもある。

飯塚そう。幾らでもあります。

後藤田自然災害は地球上の至る所に起こるし、公害だってどこでも深刻だ。保健や人口問題もそうでしょう。

飯塚日本はかつては人口爆発から、移民で足りずお隣の国に進出・侵入しました。そして今、出生率の低下から老人の国になるのではないかという心配にとりつかれています。100年そこそこの間にそういう経験をした。

後藤田具体例を1つ上げると青年海外協力隊。その宿泊施設が僕のマンションの近くにあります。あそこへ行けば日本にも純真な青年がどれだけいるか分かりますよ。そしてもう少し帰国後の保障を充実させれば応募者は幾らだって来ますよ。今はそれがない。

飯塚それはひどい。

後藤田やることが一杯あるのだから、自衛隊の使い方だけは慎重にしてくれと言いつづけているわけです。歴史を忘れた民族は繁栄を維持することはできません。過去の過ちは2度と繰り返したくない。それが戦中戦後の厳しい試練や屈辱の中から生き残った人間の、次の世代に対する責任じゃないですか。

国民全部がそれは間違っている、自分たちは軍事力でも何でも貢献するんだというのなら、それはそれで結構だ。だが今はそうじゃないでしょう。

飯塚世論調査によれば、自衛隊の海外派遣は大半の国民が反対しています。

後藤田それなのに、何で国際貢献といえば自衛隊派遣という発想が出てくるのか。

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