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自衛隊海外派遣は慎重であれ-6

自衛隊派遣には厳しい条件を

本誌PKO法案は国会で論議たけなわですが、国会の承認も事後でという線で、すでに衆院を通過しました。

後藤田憲法上の問題のほかいろんな厄介な問題が絡んでいる。それは一応クリアしていると説明しているが、中身はガラス細工なんだ。自衛隊を使うには2つの条件がある。その1つは自衛隊が今の憲法のもとでいかなる条件で存在を認められているかだ。

飯塚先生は自衛隊の前身である警察予備隊の生みの親の1人ですね。

後藤田いかに憲法9条があっても、独立国家である以上、よその国から侵略された時は国民の中核となって武器を持って立ち上がる。その必要最低限の武装部隊を置くのは独立国家としての自然権です。だから自衛隊は持ってよろしい……というのが我々の立場です。非武装を掲げる一部野党の諸君とはそこが違う。しかし、自衛隊は攻められた時の反撃部隊だから文字通り専守防衛の部隊だ。よそ様を助けに行く場合はよほど厳格な区別をしなくては、と言っているわけです。

飯塚先生の立場は明快ですね。

後藤田もう1点。国際協力はやらなければならないが、日本には現時点では平和主義の憲法がある。ということは、武力行使はしません。陸海軍の戦力は持ちません。その上交戦権も持ちませんと言って、これまでやって来た。いろいろ批判する人がいるが、これが現在の建前です。その建前に違反するようなことは出来ない。

その建前の中核は何か。それは武力行使は駄目だということです。国内で攻められた時の反撃はやむを得ないが、外国へ行って武力行使してはいけないと。

私はPKOは大いに結構という立場です。国連の平和維持活動にはいろいろな活動がある。大いに参加して結構。だがその中のPKF(平和維持軍)については国連が武器使用を認めている。

飯塚そうですね。

後藤田どういう場合かというと1つは正当防衛です。個人の生命が危なくなった時に反撃する。これは自然権です。当然なんだ。

ところが、国連の「自衛の権能」という規定によれば、任務の遂行を妨げる者がいれば武器を使ってよいことになっている。自衛隊が派遣された場合、危急存亡の時になったら武器を使うことが認められているわけだ。国連の規定ではね。組織体が武器を使えば戦闘行動になる。個人の正当防衛じゃない。

飯塚そう。

後藤田それを、「武器の使用はいいが、武力行使はやりません。もともと平和維持のために行くのだから、前提条件が崩れたら帰って来ます」と答弁している。「やむを得ず武力行使という時にはどういうことになるか」と突っ込まれると、「それは個々の隊員が自らの責任においてやる」と。「じゃあ指揮官は?」と食い下がられると、「指揮官は束ねる役」と。

飯塚ハッハッハ。言葉の遊びですね。

後藤田束ねるとは指揮することだ。上官が部下を指揮するのは統治権の一部を委任されているということでしょう。部隊としての危急存亡の時、国連の規定では任務遂行でよろしいということになっている。これは正当防衛以外にやれるということです。これを追及されると、「そういう時は撤退します。引き揚げます」「それは個々人の判断の集まりです」とくる(笑)。

飯塚そうした子供騙しのようなことで審議を尽くしたとはとても言えませんね。

後藤田そんな議論で押し通そうとしているわけだ。そういう理屈もないとはいわないが机上の理論だ。千変万化する厳しい現実の渦中で『そんな馬鹿なことをしておれるはずがない。もし武力行使になった時、誰に責任を負わせるのだ。個々の自衛隊員か。そんなことは出来ない。

参加の隊員がそんな心配をしなくてもいいような環境をつくってやるのが、政治家の仕事ではないか。政治家がやらないことの尻ぬぐいを自衛隊にやらせるのはおかしい。

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