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自衛隊海外派遣は慎重であれ-8

政治改革の原点は選挙制度の見直し

後藤田政治活動には金がかかります。しかし、やはり氏素性のよい金を使い、さらに出入りを透明にしなくてはね。

それと何故政治はこんなに金がかかるんだという原点に遡って選挙のあり方を見直す必要がある。それが当面の大問題だと思う。それに取り組んでいるわけだが、改革は誰にも痛みを伴う。時の経過とともに喉元過ぎれば熱さ忘れるで熱が冷めてきた。冷めたままでどういう結果になるか。政権の中枢が国民の信頼を失うような事件が再発したら、日本の政治がさらに活力を失うでしょう。

飯塚それは困る。

後藤田だからこの際、思い切った改革をというのが私の願いなんだ。

飯塚それで政治改革推進の音頭をとられた。

後藤田この前、サッチャーさんがお見えになって、私も講演を聞きました。聴衆の1人が、「議会政治にとって一番大事なことは何だと考えるか」と質問すると、間髪を入れず「1つは健全な野党の存在。もう1つは国民の手によって政権交替が行われること」という答えが返って来た。

まさにその通りでね。民主主義、議会政治のお手本といわれる国の、長年の総理経験者が言われることだけに正鵠を射ている。日本は全く逆になっているが(笑)。

飯塚仰言る通りだ。ところで、日本も政治資金の報告書は公認会計士の監査を受けなければ。アメリカのようにね。

後藤田当然そうです。僕らは党の会計の監査は公認会計士にやって貰うよう改正を考えています。

飯塚それでなくてはね。

後藤田世界で一番政治に金がかかるのが日本。次がアメリカだ。一番金がかからないのが英国。次いでドイツだそうだ。アメリカはテレビ放映に金を使う。無茶苦茶に相手候補をやっつけるんだ。これも善し悪しだね。

本誌最近、インディアナ州でクー・クラックス・クラン(KKK)の元幹部である候補が、白人不満層の支持で今にも現職知事を追い落とす勢いだったが、結局、負けました。あれも最後はテレビで反対派が曝露宣言をしたからだそうですね。州の評判が悪くなって観光客や会議主催者から敬遠されることを恐れた経済界が、キャンペーンの金を出したそうですが……。

後藤田あの国にはPAC――政治活動委員会という制度があるんだ。各企業にこの組織があってそこで金を集める。4、5,000あるそうだ。これが腐敗の元にもなっているといわれる。

飯塚ドイツは政治活動の資金を国が出しますね、政党法で。

後藤田そうそう。

本誌飯塚先生はずっとそれを提言して来られました。

あの考えは政治改革法案に一部取り入れていましたが、小選挙区比例代表制とともに流産になったのは残念ですね。

中選挙区制度は金属疲労

飯塚先生は徳島全県区から立候補、昭和51年に初当選されたわけですが、あそこは田中角栄前首相を獄中に送った三木武夫首相のお膝元だった。三木派との競争は「三角代理戦争」と呼ばれましたね。最初の選挙では落選するなど随分、ご苦労されたと聞いております。だから、派閥の弊害をお説きになると説得力があります。

後藤田私は政界に入るについて田中角栄先生のお世話になりました。丁度、田中金脈問題に続いてロッキード事件があり、私にも影響がありました。ところが10年たって今度はリクルート事件だ。前よりも政治に金がかかるようになったことを証明しています。

飯塚限界に来ていますね。個々の議員もそうだが、特に派閥の資金が大きいでしょう。

後藤田昔は派閥の適正規模は30人といわれたものですが、今は80人から100人だから容易じゃない。それでも派閥が続くのは、現行の中選挙区のためだ。同じ選挙区で同士討ちをするから、全国的に見て派閥が出来ざるを得ない。

仕事をするためにも、派閥ができるだけポストをとり自分のところに配分する。次はそのポストを維持するため、族議員をつくりその政治家が役所と組み、民間と組んで3つが馴れ合ってゆく。そこに政治資金の源泉ができる。そういうことだから、今の政治家は天下国家のためにエネルギーを使う前に、派閥の維持拡大に勢力を消耗しています。

飯塚「中選挙区制度は金属疲労を起こしている」と先生は書いておられるが、その通りだ。だが、選挙制度の改革――選挙区の改変は議員にとって命の問題だから……。

後藤田与野党ともそういう痛みを伴うことは避けて、ぬるま湯を楽しみたいという気持ちが強い。だが、国際貢献にしても、コメの自由化にしても、国内の政治・経済運営に当たって必ず痛みを伴います。国民に我慢してくれと言わなければならない。その時に政治家だけがぬるま湯では、国民から「勝手にしろ」と見放される。放置できるような生易しい時期ではないのです。

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